【相談内容】ジョブホッパーです。人間関係が「無関心フォルダ」のひとが多いです

拙著の読者さまからご質問をいただきました。どの世代の転職・退職理由のトップ1〜3に必ず入ってくる「人間関係のお悩み」です。
※拙著:『「会社辞めたい」ループから抜け出そう!転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版)の要約と口コミはこちら

「いま、ひとに無関心であること」は何の問題もありません

まず拙著を手に取ってくださり誠にありがとうございます。しかも、もしかしたら私と境遇が近いかもしれません。私も早期退職を2回繰り返した経験のあるジョブホッパーです。しかも「おれは悪くない。社会が悪い」と主語大きめの他責人材だったので、転職エージェントにも転職サイトにも冷たくされて無職になりました。相談者さまは幸せなジョブホッパーでありますように。

「人間関係の仕分けノート」についてですね。質問者さまの本音を磨くことにも、今後の仕事選びの軸にもなる大切な項目です。

まず「無関心なひとが多い」ことについて私見を述べさせてください。(シンプルに「人間関係の仕分けノート」のコツが知りたい場合は段落【悩んでいるときは「私はこう思う」から距離をとってくださいませ】とジョブホッパーの方向けのメッセージ【「次は失敗したくない」と思っていると、内定から遠ざかります】に飛んでくださいませ。クリックすると飛べます)

推測で恐縮ですが、「無関心フォルダが多くなってしまいます」という書き方から考えると「ひとに無関心であること」自体は何も問題ありません。特にいま現在の質問者さまが「ひとに無関心であること」は何の問題もありません。「自分は冷たい人間なんじゃないか」などの悩みは持たなくてOKです。仮にそう感じていたら、相談者さまは温かいお人柄と考えられます。本当に冷たいひとは無関心を超えて、「ひとを思い出せない」となります。

かつ「自分はひとに無関心だな」と質問者さまが自分を分析されているとしたら、分析できている時点で客観性があるので人間関係のあり方についてこれから変えていくことが絶対にできます。

繰り返します。いま「無関心フォルダ」が多いことはなんの問題もありません。質問者さまが「つながりフォルダを増やしたいなぁ」と考えているのかなど、これからの時間が大切です。「これから人間関係をどうデザインしていきたいか」が仮でも決まると、仮にひとに関心を払ってこなかった過去があったとしてもそれはネタになります。「無関心な自分も変われた」と自信につながるかもしれませんし、過去の質問者さまに近いひとを救えるかもしれません。未来が定まると過去の解釈を変えられて、いまの行動も自分が願うようにつくれます。

質問文に「新しい職場で働く際は」とあるので、きっと質問者さまは転職活動なり独立なり、未来に向かっていると推察します。昨日よりも今日よりも、これからありたい人間関係に時間軸を移してみてくださいませ。

「勝手にやったこと」から人間関係の本音は見つかります

そして中心のご質問は「無関心フォルダに入れるひとばかりだから、つながりフォルダに入れる人の基準を少し下げてもいいのか(下げた方がいいのか)」ですね。結論から申し上げますと、「基準を少し下げたい」と本音で思っている、つまり「実はもっと人間関係に恵まれていたんじゃないか」「いまはたまたまひとに関して少し冷めているだけで、本当はもっとつながりを感じていたいのではないか」と思っているのであれば基準を下げることはOKです。「人間関係の仕分けノート」は一回つくって終わりではなく、自分のタイミングで何度もつくっていいものですしね。

質問をちょっとひっくり返してしまうかもしれません。質問者さまにとっては、基準を下げた方がいいかどうか以上に大切なことがあるかもしれません。それは「基準を下げた方がいいんじゃないか」と感じたその心の理由を言葉にすることです。質問者さまはどうして「基準を下げた方がいいのかも」と考えて、しかもわざわざ佐野を探して質問までしてくださったのでしょうか?「いや、そこまで深い理由はなくて仕分けの仕方が気になっただけで・・・」とお答えになる可能性もあります。でも、「誰に言われるでもなく勝手にやったこと」の中に、自分だけの強い価値観は眠っていることが多いのです。

ぜひ「確かに自分から進んで質問したなぁ、人間関係について引っ掛かっていることがあるかも」と捉えて、「基準を下げた方がいいのかも」と思った理由を探ってみてくださいませ。質問者さまが本音で思う「これからどんな人間関係をつくりたいのか」は、具体的には目の前にあるであろう転職活動であれば入社の決め手にもなる社風や、選考の中のやりとりで自分と合うひとがいるかを見極めるセンサーにもなります。

悩んでいるときは「私はこう思う」から距離をとってくださいませ

ここまで2つの推測から質問にお応えしているので、すべて的外れの可能性があります(笑)。そのときは申し訳ございません。この段落の文章だけ参考にしてくださいませ。

質問文を拝見する限りですが、質問者さまは「人間関係の仕分けノート」をご自身の基準で「無関心が多い」「あの上司は相性が良かった」と考えているように見受けられます。「自分の基準で仕分けする」は納得感を得るためには有効なのですが、最初に行うと行き詰まる可能性が高まります。特に、これまでつながり・しがらみ・無関心の違いについて明確に定義していなかった場合は「なんとなく無関心」などでフォルダ分けしてしまうこともあります。

そのため質問者さまの人間関係の基準は、一旦横に置いてみてください。また復活させるので、捨てるわけではありません。

まず使っていただきたいのは拙著の中にある3つの基準です。【「つながり」は未来、本音、失敗でつくられ、 「しがらみ」は過去、義理、成功でつくられる】の箇所です。「あのひと気になるかな」などの感情を最初に人間関係の仕分け基準に使うと、無関心フォルダに入ることが多くなるひともいます。質問者さまもそうかもしれません。そのため、拙著にある3つの基準を使う、つまり感情よりも論理を優先して仕分けしてみてください。

そして隙あらば宣伝🐸

唐突ですが、アインシュタインが言ったとされる言葉をご紹介します。それは「どんな問題も、それをつくり出したときの意識レベルでは解決できない(Problems cannot be solved by the same level of thinking that created them.)」です。

質問者さまの今回の悩みも、この言葉で解決の糸口が見出せます。アインシュタインの言葉を応用すると「自分の人間関係の悩みや問題は、自分の人間関係の考え方では解決できない」です。まずは【「つながり」は未来、本音、失敗でつくられ、 「しがらみ」は過去、義理、成功でつくられる】で仕分けしてみてくださいませ。その後に質問者さまの「とはいえ関心があるかないか、好きか嫌いか」などの感情の基準を使う。そうすると論理と感情のいいバランスで、本音を捉えることができます。

世界的ベストセラーである『夜と霧』の著者であり、ロゴセラピーの創始者であるヴィクトール・フランクルはこう述べました。

あることに没頭し、あるいはある人を愛する度合いが強くなり、自分を忘れれば忘れるほど、人は人間になり、自己を実現する
P36『ロゴセラピーのエッセンス 18の基本概念』新教出版社

質問者さまはいま、「自分は人間関係についてどう思っているか知りたい」、つまり自分に集中しています。しかし、自分に集中すればするほど自分はわからなくなります。「自分を知りたい」という誰もが持つ根源的な欲求に蓋をすることはせず、でもその欲求を満たす方法は「自分ではなくあることやひとに没頭する」であること。

自分の髪型を直す最高の方法は「いま私はどんな寝癖があるのか」と自分に問うのではなく、「鏡に向かう」と同じですね。質問者さまも自分の人間関係の基準から距離を一旦置くことで、ご自身の理解をさらに深めていただければ幸いです。

「次は失敗したくない」と思っていると、内定から遠ざかります

そしてジョブホッパー経験者あるあるを最後にお伝えします。ジョブホッパーになると「次は失敗したくない」という意識が強くなります。「もう転々とすることに疲れた」です。でも、この状態で転職活動をすると、高確率で内定が取れなくなってしまいます。

「次は失敗したくない」意識は、言ってしまえば「会社から安定した何かをもらいたい」気持ちです。この「消費者意識」ほど、ひとのリアルを見てきた経営者や人事の方ほど嫌います。「いい会社に入りたいひとはいらない。いい会社をつくりたいひとと働きたい」と思っている選考側の人間は多いです。会社が傾いたときにすぐに見切りをつけるひとも多いですからね。

ちなみに「ファン意識」も必要ありません。「この会社に入りたいです。幼少期からずっとこの会社の商品を愛しています」などは不要です。会社が採用の場面で必要としているのは提供者、つまり一緒にその商品やサービスをつくる仲間であり、ファンは必要ありません。特にtoCの会社はファン意識の高い転職希望者を丁重に扱いますが、丁重に扱うだけです。内定を渡すことはまずありません。社員と依存し合う関係ではなく、質問者さまが相互に補完し合うような次の関係を望んでいる場合は、「仲間意識」を呼び起こして転職活動をしてくださいませ。

そのためには「人間関係の仕分けノート」をつくり「退職成仏ノート」をつくり、ぜひ「明日への手紙」まで進めてみてください。そうすると「会社から何かをもらおう」という意識が「会社と一緒にどんな未来がつくれるか。そのために自分は何ができるか」と、いわば会社と仲間意識に変わっていきます。そんなひとたちと働くと、「つながり」が増えます。

「人間関係の仕分けノート」のゴールは質問者さまの本音を知ることですが、「本音磨き」のゴールはさらにその先にあります。それは「最高であり続けてくれる会社はない。会社も自分も変わるから」と気づき、「会社とは良いときも悪いときも、お互いの弱みを補完し合う関係をつくる」と思い定めることです。

確かにこの考え方は「社畜すぎる」「前時代的だ」と批判されるかもしれません。「個の時代を生き抜け」や「市場価値を上げろ」といった個人にフォーカスされやすいいまの時代としては、古く感じられる可能性もあります。「やりがい搾取」「※ブラック企業に絡め取られる」という意見もあるでしょう。これは「守りのキャリア論」として、またご質問があればお応えします。取り急ぎ今野晴貴さんの『求人詐欺 内定後の落とし穴』(幻冬舎)をご覧ください。転職活動は守備も攻撃も必須です。

仕事も生活も充足させているひとで「私だけの利益」を考えているひとは、利益を得られていません。シンプルに、「こいつ搾取するな」と気付かれて手を差し伸べるひとが減るからです。個の時代よりも関係性の時代ですし、自分だけの市場価値よりもこれから所属する組織の価値を上げることに集中した方が、結果的に自分も充足します。勝馬に乗ろうとするひとよりも、勝馬を育てようとするひとがいいキャリアを積み上げています。

質問者さまが「この会社をもっと良くしたい」と思える会社に出会い、つながりを育む人間関係に恵まれることを願っています。ジョブホッパーに幸あれ。

※「ブラック企業」は差別用語ですが、わかりやすさを重視して今回は特別に使用しています。正確には「法令違反企業」です。

まとめ

まとめます!
(1)「これから人間関係をどうデザインしていきたいか」が仮でも決まると、仮にひとに関心を払ってこなかった過去があったとしてもそれはネタになる
(2)「誰に言われるでもなく勝手にやったこと」の中に、自分だけの強い価値観は眠っている
(3)自分を見るより鏡を見た方が、自分がわかる

こういった匿名の質問はこちらからどうぞ〜。
●質問箱
https://peing.net/ja/taishokugaku

●マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/atsuhiko_kamiya

それでは最後に、歌詞を見ながら聞いてください。GLAYで「MIRROR」。(今回の相談内容とは関係が、ない!)

〜経営者、上司の方へ〜社員の悩みは「Let’s」で解決すると、自走するまでのスピードが短くなる

こういった働くひとの相談に1000名以上乗っていると、「これは会社で解決しないと退職しちゃう問題だよな」と「これを会社で解決するには時間的コストがかかりすぎるだろうな」と相反する気持ちに引っ張られます。もし会社の部下が上記のように人間関係の悩みを抱えていたらどう対応しますか?

やるべきでないことは「それはこう解決したらいいんだよ」と指導することです。それは悩みの解決の主導権を奪っています。成長の機会も同時に。アドバイスは善意であったとしても、受け手からすると「私には解決する力がないんだ」と思ってしまいます。「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉をデスクトップに貼っておいてください。

とはいえ、「いつまでもそんな悩みで仕事の生産性を下げて欲しくない」と思ってしまう状況もあります。「これを会社で解決するには時間的コストがかかりすぎるだろうな」の気持ちです。解決までの時間を短く、かつ悩みの解決の主導権は渡したままの方法もあります。キーワードは「Let’sコミュニーケーション」です。

「Let’sコミュニーケーション」は悩んでいるひとを前に「あなた、解決するひと。私、アドバイスするひと」の線引きをしないことです。具体的な行動としては「私もその問題を解決したい。私に何ができる?」と問いかけ、相手に使ってもらうことです。相手が「●●さんだったらどうしますか?」とアドバイスを求めてきたら、「こうすればすべての問題は解決できる」とか教訓っぽくしなくていいので「私はこうやったら解決できたけど、どう思う?」と主語を小さくする。「私から悩みを話しておいてなんですけど、いまは黙っていてください」と言われたケースもあります。

「相談しといて腹立つな」とか「めんどくさ」とプレイヤーとして優秀でマネージャーや経営者になった方は思うかもしれません。でも、「Let’s」で解決していく方が立ち上がりが早いんですよね。部下と上司の関係であれば、部下に「上司は使うものだ」という意識が芽生えます。ボスマネジメントを教えることが、「めんどくさ」と思われがちなミレニアル世代やZ世代の社員の成長速度を早めます。

反対に依存させたい場合は「なんでも相談しろ!私が解決してやる!」とコミュニケーションをとってください。そして解決してください。「あなたについていきます」と従順な部下が出来上がります。ただし、部下はあなたが失敗したときに、すぐに離れます。会社が傾いたときにすぐに退職します。依存できないとわかったら、新しい依存先を探すだけです。

「社員に自走して欲しい」と願う経営者やマネージャーの方は、「Let’sコミュニーケーション」を試してみてくださいませ。

転職と退職の現場からは以上です。

退職学/リザイン・マネジメント(Resign Management)/パワーワード・パートナー:佐野創太

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