職務経歴書は表紙から作る

職務経歴書を前にすると手が止まる。何を書けばいいのか、どれが大事なのか、書けば書くほどわからなくなる。これは書く力の問題じゃなくて、考えが渋滞しているサインです。今日はそのほどき方を考えます。

キャリア相談でマーケターの方が言いました。「職務経歴書に何を書いていいか本当にわからなくて」。優秀な人でした。それでも手が止まるんです。話すうちに見えてきたのは「自分の経験のすべてを正しく証明しなきゃ」という義務感でした。あれもこれも書いて抜け漏れなく評価してもらおうとする。でもスペックを並べるほど、読む側には伝わらなくなる。情報を足すほど詰まっていく。よくある情報渋滞です。

本文の前に表紙を作る

職務経歴書はそもそも、経歴が派手な人しか通らない作りになっています。よく知られている社名や、数字で表しやすい職種だったり。そんな人も仕事も一握りです。だからそこで勝負しようとすると、余計に固まってしまいます。やることは逆で、本文を書く前に表紙を作ることです。本でいえば職務経歴書は本文、その前に一枚でいいので自分が一目でわかる表紙をつくること。キャリアを3つのキーワードに削って図にするだけでいい。全部を証明するのをやめて、何を解決できる人かを一枚で見せます。

あの方の場合は「マーケティングを上流から下流まで」「チームでリピーターを育てた」の2つが軸になりました。情報を足すのをやめて削った瞬間、あれだけ止まっていた手が動き出したんです。表紙がなくて急に本文から始まる本は、買えないですよね。

詰まっているときは、足すより削る。これは職務経歴書だけじゃなくて、考えごと全般に効きます。全部を正しく伝えようとするほど、いちばん伝えたいことが埋もれます。全部はむりなんですよね。何を書くかで迷ったら「誰に、何を解決できると伝えたいか」を一つだけ決める。そこから逆算すると、書くことと省くことが自然に分かれていきます。書けないのは中身がないからじゃなくて、絞れていないだけなんです。ここでB’zの『イチブトゼンブ』が浮かびます。全部を完璧にしようとしなくていい、ひとつ突き抜けたところがあればいい。

名曲はいつも本質を突いてきます。

私もこの記事を、最初は言いたいことを盛りすぎて一度ぜんぶ消しました。(で、結局いちばん言いたい一行だけ残した)手が止まったら足す前に削る。表紙を一枚、キーワードを三つ。それだけで渋滞から抜け出せます。いま何を書けばいいか分からず固まっているものがあるなら、まず「誰に何を」を一つだけ決めてみる。書き出すのはそのあとで十分です。

この記事に関連する一冊

『「考えているのに進めない」がなくなる 思考渋滞から抜け出す方法』(あさ出版)

書くほどに何が大事か分からなくなるのは、情報が渋滞しているサインです。足すより削って、一枚の表紙に絞る考え方を、この本で書きました。

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書き手(佐野創太)のプロフィール

佐野創太(すり合わせ学の編集長/退職学®研究家)

すり合わせ学の編集長/退職学®(resignology)研究家

法人・組織の「ずれ」を力に変え、個人には本とキャリア相談から次の一歩を届けています。


著書一覧

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