どれだけ頑張っても自信だけが育たない。これは私にもよくあります。頑張ってると少しずつ結果もついてきているのに、自分ではぜんぶ「とはいえまぁ当たり前にやっただけ」に見えてしまうんです。頑張り屋の人ほど、この「実力はあるのに自信がない」状態にはまります。今日はその正体と抜け方を考えます。
先日のキャリア相談で、経理を10年やってきた方が言いました。「リーダーやマネージャーの求人に応募したほうがいいのはわかるんです。でも、名乗っていいのか自信がなくて」。その人は同族経営の会社で、社長夫人が5年半も産休で不在のあいだ、たった一人で経理を全部回してきた人でした。決算も税理士とのやりとりも社長への説明も、法律の変化への対応もぜんぶ自分。誰の指導もないまま10年です。客観的にはもう立派なリーダーなのに、本人だけが「私なんて」で止まっています。
なんでこんなに考えても自信が出ないのか。理由ははっきりしていました。比べる物差しがなかったからです。悩みが進まないときは、たいてい情報・感情・意味のどれかの車線が詰まっています。この人が詰まっていたのは情報の車線でした。ひとりで働いてきたぶん、自分のスキルが市場でどう評価されるのかという情報が一度も入ってこなかった。判断材料がないまま自己評価だけしようとするから、いくら考えても答えが出ず、低いほうへ低いほうへ固まっていきます。自信のなさは性格でも実力不足でもなくて、比べる相手がいなかっただけ。
情報が足りない渋滞だったんです。
外の物差しを一つ入れる
情報の車線が詰まっているときは、感情でどうにかしようとしても進みません。「自信を持とう」と気合を入れても意味がないんです。やることは、外の物差しを一つ入れること。この人の場合はまず全部の業務を紙に棚卸ししました。すると「一人で決算まで回す経理はこの年収レンジで、これくらい評価される」という市場の相場が見えてきました。数字という外の物差しが一本入っただけで、「私なんて」が「これはむしろ強みだ」に変わりました。自信が湧いたというより、渋滞していた情報が流れて正しく見えただけです。
一人でやってきたことは経験がないことじゃなくて、全部ひとりで回した証明でした。弱みのフレームから裏返すと、同じ経歴が強みに見えてきます。「自分を否定していたのは、自分だけでした」とホッとした様子でした。
比べる相手がいないだけで、私たちは仕事の値段がわからなくなります。今もときどき「これ人に出していいのかな」と手が止まる。(で、だいたい誰かに見せて初めて、あ、これでよかったんだと気づきます)自信が出ないときは、気持ちを盛り上げるよりも先に外の物差しを一つ借りてみる。詰まっているのは心じゃなくて、情報のほうかもしれません。いま自分がいちばん「私なんて」で止まっているのはどこだろう。そこで一度、比べられる相手か数字を一つ探してみませんか。私も今日、ひとつ棚卸ししてみます。
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書き手(佐野創太)のプロフィール

すり合わせ学の編集長/退職学®(resignology)研究家
法人・組織の「ずれ」を力に変え、個人には本とキャリア相談から次の一歩を届けています。
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著書一覧
(1)『「会社辞めたい」ループから抜け出そう!転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版/台湾版あり)
・新装版:『脱 会社辞めたいループ 辞めたいけど辞めたくない人のための転職の思考法』(サンマーク出版/タイ版あり)
(2)『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)
(3)『転職・退職を考えたら知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)
(4)『70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法』(日経BP)
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