全力をやめたらやっと続いた

全力をやめるのがいちばん怖い。手を抜いたと思われそうで、力の抜き方がわからないんです。私もずっとそうでした。先日、転職活動中のマーケターの方が、あるラッパーの言葉に救われたと教えてくれました。「肩の力を抜けよ」。ずっと完璧主義で120%で走ってきたその人が、そこから「力は抜くけど手は抜かない」を大事にするようになったそうです。全力をやめるのはサボることじゃなくて、続けるための技術でした。

「もっと頑張らなきゃ」。私たちはうまくいかないとき、たいていアクセルを踏み増します。でも常に100%以上で走り続けると、どこかで必ず息切れします。厄介なのは、頑張れてしまう人ほど無理しているのが自分でも見えないことです。周りから「いつも元気だね」と言われて余計に止まれなくなる。120%で頑張ろうと決めた朝に限って、夜には30%の自分しか残っていない。私はしょっちゅうこれをやります。

ここで大事なのが「力を抜く」と「手を抜く」は全然違うということです。手を抜くのはやるべきことを雑にすること。力を抜くのはいざというときに100%へ上げられる余力を普段から残しておくことです。つまり普段を70%にしておく。これは怠けではなく、いちばん強い状態を必要なときに出すための設計です。あの方の「力は抜くけど手は抜かない」はまさにこれでした。全力の反対はサボりじゃなくて、持続可能です。

この考え方は働き方だけじゃなくて、選ぶときにも効きます。この方はいい会社が2社あって、どちらも決め手に欠けると悩んでいました。完璧な選択肢を待っているといつまでも決められません。でも「70%良ければ決める」と腹をくくった瞬間、前に進めるようになりました。100点の道を探し続けるより、70点の道を選んでそこで100点にしていく。転職も働き方もたぶん同じで、全部を完璧に揃えてから動くのではなく、7割見えたら一歩踏み出す。残りの3割は歩きながら埋めればいいんです。

全力をやめるのは勇気がいります。「手を抜いた」と思われそうで怖い。私も70%で働こうと本に書いておきながら、いまだについ100%を出そうとして夜にへとへとになっています。それでも力を抜くことは、真面目さを否定するものじゃありません。長く機嫌よく走り続けるための、いちばん賢い方法です。私がいちばん肩に力が入るのは締め切り前です。そこだけでも70%にできたらと毎回思っています。今日はどこで力みすぎていたか、ひとつ思い出すところから始めませんか。

この記事に関連する一冊

『70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法』(日経BP)

力を抜くことと手を抜くことは違います。ふだんを7割にして、いざという時に100%を出せる余力を残す働き方を、この本に書きました。

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「20代で頑張り過ぎて短期離職→再入社→介護離職 『70%で働く』に至るまで」

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「自分の120%は他人の80%」まじめな人ほど陥る“セルフ搾取”/「『70%で働く』はサボりじゃない」

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書き手(佐野創太)のプロフィール

佐野創太(すり合わせ学の編集長/退職学®研究家)

すり合わせ学の編集長/退職学®(resignology)研究家

法人・組織の「ずれ」を力に変え、個人には本とキャリア相談から次の一歩を届けています。


著書一覧

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