失敗って、そもそも何ですか?

失敗するのが怖くて、なかなか動けない。これは相談に来る人だけの話じゃなくて、いまの私にもあります。書くのも人前で話すのも、いまだに「しくじったらどうしよう」が先に立ちます。自意識が止まらない・・・!だからこの話は乗り越えた人が上から言うものとしてではなく、いまも同じところで足を止めている一人として書きます。仲間がいるはず。あるとき、その「失敗が怖い」の正体が少しだけ見えた瞬間がありました。

スタートアップを支援する仕事で、2社のどちらに入るか決めきれない30代の人がいました。どちらもいい会社です。決め手がないぶん、動けなくなっていました。話しているうちに、その人の口から何度も「失敗したくない」が出てきました。それで私は思わず聞きました。「失敗ってそもそも何ですか?」。(正直、聞いた自分もその場ですぐには答えられませんでした)その人はしばらく黙りました。成果が出ないことが失敗なのか。それは自分のせいなのか、環境のせいなのか。

「失敗」というひとことの中に、実はいろんなものがごちゃっと詰まっていました。中身を開けてみるまで、それに気づけなかったんです。

定義がないと恐怖だけがふくらむ

私たちは怖いものの正体が見えないとき、いちばん怖くなります。暗い部屋で何かがいる気がして動けない。あの感じに似ています。「失敗」も同じでした。中身を決めていないから、あらゆる悪い可能性が全部「失敗」という一語にくっついて、どんどん重くなる。成果が出ないのも、上司に評価されないのも、5年後にうまくいかないのも、ぜんぶまとめて怖い。これでは動けないのも自然なことです。逆に何を失敗と呼ぶかをひとつずつ決めていくと、恐怖はしぼんでいきます。「成果が出ない=失敗」なのか。

それは自分の努力の話なのか、それとも会社の環境や顧客の数の話なのか。分けていくと「これは自分のせいじゃない部分だ」と見えてくる。正体不明の怖さが手のつけられる課題に変わります。

その人の業界では、失敗した経験がある人ほど信頼されるという話も出ました。会社が傾いたとき、最後まで残ってきちんと畳んだ人が次の場所で頼られる。うまくいかなかった事実そのものより、そこで何を持ち帰ったかが見られている。失敗を「起きてはいけないこと」から「起きたら次の材料になること」に置き換えてみる。選ぶ前から怖がって固まる時間が、ぐっと減ります。この人も失敗の中身をひとつずつ言葉にしていくうちに、2社のうち一方に決められました。

決め手が増えたというより、怖さの正体が分かって決めていい状態になったという感じでした。

「失敗って、そもそも何ですか?」。これは人に聞かれる前に、自分へ一度聞いてみる問いですね。私も手が止まったときだったりやたらと言い訳ばかりが浮かぶマイナスクリエイティブな状態になったりするときは、紙に「いま何を失敗だと思ってる?」と書き出すようにしています。(それでもだいたい、書き出す前にしばらくスマホを触ってしまうんですけど)怖いのはたぶん失敗そのものじゃありません。失敗という言葉の中身が、ぼやけたままだからです。いちばん「失敗したくない」と身構える場面で、自分が何を失敗と呼んでいるのか。

そのひとことの中身を開けてみると、怖さは少しだけ小さくなります。私も、また手が止まったら開けてみます。

この記事に関連する一冊

『「考えているのに進めない」がなくなる 思考渋滞から抜け出す方法』(あさ出版)

『失敗』の中身がぼやけたままだと、あらゆる不安がその一語にくっついて重くなります。中身を一つずつ分けて怖さを小さくする考え方を、この本で書きました。

紹介ページで要約や本のキーワード、読者のレビュー、Web記事も読めます。

紹介ページを見るAmazonで見る

メルマガ「キャリアの休憩室」

相談者さんの生の悩みからつむぐコラムを不定期でお届けしています。登録は無料です。

メルマガを受け取る


最新のお知らせ

(1)【最新刊】『「考えているのに進めない」がなくなる 思考渋滞から抜け出す方法』(あさ出版)

思考渋滞から抜け出す方法(あさ出版)
https://amzn.to/4vF58LY

(2)『70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法』(日経BP)好評発売中

70%で働く(日経BP)
https://amzn.to/4dVZpw3

(3)連載|日経BOOKプラス
「20代で頑張り過ぎて短期離職→再入社→介護離職 『70%で働く』に至るまで」

日経BOOKプラス連載
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/072200743/072200001/

(4)YouTubeをひっそり再開しました

YouTube(佐野創太チャンネル)
https://www.youtube.com/@sano-souta

(5)出演|TBS CROSS DIG with Bloomberg(Human Insight)
「自分の120%は他人の80%」まじめな人ほど陥る“セルフ搾取”/「『70%で働く』はサボりじゃない」

TBS CROSS DIG with Bloomberg 出演
https://www.youtube.com/watch?v=Y4394uziDQI

(6)出演|PIVOT(PIVOT LIFE)
「70%で働く思考法」――「もっと頑張る」から脱する働き方

PIVOT 出演
https://www.youtube.com/watch?v=IZDu_wZe9Uw

(7)インタビュー|BEST TiMES(ベストタイムズ)
「過重労働・パワハラ・介護離職…七転八倒の仕事人生で偶然出会ったフランクルの言葉とは?【『70%で働く』佐野創太氏インタビュー#1】」

https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/4302241/

(8)掲載|日本人材ニュースONLINE(連載「だから社員は辞めていく」)
「社員を退職に追い込む『サイクル酔い』の構造とは」

日本人材ニュースONLINE 掲載
https://jinzainews.net/26813970/

(9)フェルミ漫画大学:『70%で働く』(日経BP)が漫画になりました
登録者数140万人のマンガで本の内容をわかりやすく勉強できるチャンネルで、拙著が紹介されました。

フェルミ漫画大学『70%で働く』
https://www.youtube.com/watch?v=cPR949n3IuE


書き手(佐野創太)のプロフィール

佐野創太(すり合わせ学の編集長/退職学®研究家)

すり合わせ学の編集長/退職学®(resignology)研究家

法人・組織の「ずれ」を力に変え、個人には本とキャリア相談から次の一歩を届けています。


著書一覧

(1)『「会社辞めたい」ループから抜け出そう!転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版/台湾版あり)

「会社辞めたい」ループから抜け出そう!(サンマーク出版)
https://amzn.to/3nAvkXZ

・新装版:『脱 会社辞めたいループ 辞めたいけど辞めたくない人のための転職の思考法』(サンマーク出版/タイ版あり)

脱 会社辞めたいループ(サンマーク出版)
https://amzn.to/44ZVf01

(2)『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)

ゼロストレス転職(PHP研究所)
https://amzn.to/3x5lFwR

(3)『転職・退職を考えたら知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)

転職・退職を考えたら知りたいことが全部のってる本(主婦の友社)
https://amzn.to/4sAKdcs

(4)『70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法』(日経BP)

70%で働く(日経BP)
https://amzn.to/4dVZpw3

(5)『「考えているのに進めない」がなくなる 思考渋滞から抜け出す方法』(あさ出版)

思考渋滞から抜け出す方法(あさ出版)
https://amzn.to/4vF58LY